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1964年東京オリンピックのドキュメンタリー映画とは
1964年東京オリンピックの開催にあたり、オリンピック東京大会組織委員会は、東京オリンピック映画協会(1963年にニュース映画7社により設立)に対し東京オリンピックの記録映画の制作を依頼しました。監督は、黒澤明が諸事情から降板し、急遽、市川崑が務めることに決定しました。
市川崑監督は、自身とその妻で脚本家の和田夏十の名コンビに加え、新鋭脚本家の白坂依志夫と詩人の谷川俊太郎という布陣で、そもそも筋書きなどはないはずのオリンピックのためにまず緻密な脚本を描き、これをもとに壮大なドラマである『東京オリンピック』を撮るという制作手法をとりました。日本を代表するカメラマンとして世界的にも名を知られた宮川一夫が主導した撮影にも、アスリートの心情の表現を重視した演出や、超望遠レンズをはじめとする複数のカメラを使った多角的な描写などを駆使し、従来の「記録映画」とは全く性質の異なる極めて芸術性の高い作品に仕上げました。
しかしそれは、1936年のベルリンオリンピックを記録したレニ・リーフェンシュタール監督の『民族の祭典』と並んで、「芸術か記録か」という大論争を引き起こすことになりました。
さまざまな波紋を広げながらも、映画『東京オリンピック』は日本国内で12億2321万円の配給収入を記録。この記録は、その後の1972年公開『ゴッドファーザー』に抜かれるまで日本記録を保持しました。さらに、同年度のカンヌ国際映画祭では国際批評家賞、英国アカデミー賞ドキュメンタリー賞を受賞。また、映画館の他にも日本各地の学校や公民館で上映会が開かれたことから、その観客動員数は一般観客750万人、学校動員1600万人の合計2350万人で、事実上日本映画史上の最多記録であると言われています。
映画「東京オリンピック」のストーリー
ブルドーザーが鳴り、東京の街々は“東京オリンピック”の歓迎準備は万端整った。ギリシャに端を発した近代オリンピックの火が、太平洋を渡って、今、東洋の国日本に近づいている。羽田空港には、アメリカ選手団を初めとして、各国選手が到着した。万国旗のひらめく中、聖火は点火され平和を象徴する鳩が放された。翌日から競技が開始された。一〇〇米男子決勝ではアメリカのへイズが、走高跳男子決勝ではソ連のブルメルが優勝。つづいて、砲丸投男子決勝でアメリカのロングが女子決勝ではソ連のタマラ・プレスが優勝。円盤投男子決勝ではアメリカのオーターが、女子決勝では再度タマラプレスが勝った。そして薄暮の中で、熱戦をくり広げた棒高跳は、ついにアメリカのハンセンの上に輝いた。翌日、雨空だった競技場で、一万米決勝でアメリカのミルズが優勝、つづい男子二〇〇、女子走高跳、女子槍投とうが行われた。八〇〇米女子決勝では、イギリスのパッカーが優勝。競技場のあちこちでは美しく逞しい身体がゆき交う。いそがしく動く報道陣の群れを追うように、国歌が流れ、女子八〇メートル・ハードル期待の依田選手が口笛を吹いて緊張をほぐしている。体操では、日本選手が堂々と君が代を鳴らした。今度初めて参加した国もある、チャドだ。三名の選手が参加した。二度と来られないだろう。競技場の晴れの舞台で、独立国の責任と喜びを味わった。日本のお家芸、重量挙、レスリング、柔道も、予想以上の成績だった。フェンシング水泳、フリーライフル、自転車、サッカー、ホッケー、バスケット、水球、馬術、そして、バレーボールでは、東洋の魔女が君が代を鳴らした。カヌー、ボート、ヨット、競歩、近代五種と競技は展開し、オリンピック最後を飾るマラソンは、アべべの楽勝で終った。すべて終了した。メキシコで再会する日を祝して、聖火は太陽へ帰った。メキシコの国旗がメインポールに翻えっている。
制作 1965年
- 総監督 市川崑
- 監修 青木半治 今日出海 南部圭之助 田畑政治 竹田恒徳 与謝野秀
- 脚本 和田夏十 白坂依志夫 谷川俊太郎 市川崑
- 企画 オリンピック東京大会組織委員会
- 製作 オリンピック東京大会組織委員会
- プロデューサー 田口助太郎
- 撮影 林田重男 宮川一夫 長野重一 中村謹司 田中正
- 美術監督 亀倉滋作
- 音楽監督 黛敏郎
- 録音監督 井上俊彦
- 音楽演奏 読売日本交響楽団
- 技術監督 碧川道夫
- 協力 防衛庁 警視庁 東京消防庁
- ナレーション 三国一朗
- 現像 IMAGICA
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東京オリンピックの模様を収録した映像作品、当時の日本を始め各国の選手達の様子などに密着している。市川崑監督が自ら編集を行った特別版。